引退後、初の公式記者会見に臨んだ中田英寿さん。会見中には、自身の今後のキャリアについてなどの発言があった。オシム監督に代わって指揮をとることになった、岡田武史新監督に対してコメントを求められると、中田さんは「尊敬できる監督。でも自分は教えることに興味はない」と語ったようである。元日本代表選手の中には、引退前からC級のコーチライセンスなどを取得していて、指導者を目指す人も少なくないが、中田さんは、サッカーには関わるものの、指導者とは違う道で、何かをしていきたいと考えているようだ。
自身の足で50か国100都市以上を旅して、いろいろなものを見て、感じてきた経験から、FIFAやサッカーの力でまだまだできることが世界にたくさんあるのではないかと、実感としてやりたいことが見えてきた。それを今後どのようなカタチで具現化していくのか。
■中田英寿公式サイトに、会見の様子:http://nakata.net/jp/chaser/chs68700.htm
11月に発売された「クーリエ・ジャポン」という雑誌では、40ページの中田さんの特集が組まれた。その中で、世界を回っていたときに直面した、貧困や環境面の世界的問題に対して、中田さんは自分も何かができるのではないかと考えたが、それは今まで行われてきたボランティアやサッカーの普及活動だけではなく、”ビジネスとしての社会貢献”というやり方もあるのではと言うのだ。
たとえば、貧困層に対して、グラミン銀行のような、低金利無担保融資システムを提供することなどが一例として上げられている。JICAなどが地道に行っているボランティア活動などだけでなく、あえてビジネスとして行うことで、多くの人が生活のため、自身の利益のために積極的に関わることができるような活動。その可能性についても探っていきたいようだ。
冒頭の記者会見の席上では、国際サッカー連盟(FIFA)のブラッター会長が、中田英寿さんをFIFAの親善大使に任命することを明らかにしている。発展途上国の支援などに尽力する親善大使は、現在15名いるが、日本からは初めての選出だという。新聞記事によると、中田さんは2008年7月の北海道洞爺湖サミットに合わせ、チャリティーマッチを計画しているとのこと。
道なき道を行く中田さんは30歳。競技を終えて、旅に出て、自分が何に心惹かれ、何を感じ、どんな思いが生まれてくるのか。今、じっくりと自分と向き合っているのだろう。良かれと思って周囲はいろんな道を用意したり、提示してくれるだろうが、中田さんは、周囲から何を望まれ、期待されているかということの前に、すべてをかけてきたプロサッカー選手という職から離れた自分を、一人の人間として、一度時間をかけて、自分で確認したいのだと思う。そして道がないところを歩こうとすることで、ラクをしない、自分の足りないところを再確認する、新しい何かをつくり出すために努力することを、真摯に課していきたいのではないか。
競技を引退した後、少し旅に出てみたいと思う。そう思う選手も少なくない。トップアスリートは外国遠征などのチャンスも多かったが、そういう遠征では見えなかったものが、個人として旅してみると新たに見えてくる。旅ではいいことも、嫌なことも、予期せぬタイミングで訪れる。怒っていても誰も助けてくれない。自分でどうにかするしかない。でも、思わぬ出会いに心が温かくなったり、ラッキーなことも怒ったりして、旅の収支はとんとんだったり。そのことが自分を謙虚にしてくれたり、多くのことを気づかせてくれる。危険も少なくはないが。
旅をすることの意義。そして中田選手がこれからどんなことをしようとするのか。一人トップアスリートのこれからに注目したい。