何気なく見ていたあるテレビ番組で、プロボクサーの内藤大介選手が、「引退後の自分が心配」と相談しているのを見た。
10月に行われたWBC世界フライ級の防衛戦で、亀田大毅選手に勝ち、一躍時の人になった内藤選手だが、それでも引退後の生活、自分がどうなるのか、不安だという。
実直誠実な人柄のボクサーとして、多くの人に好印象を持たれていることが、本人としてもだんだんと窮屈になってもいるようだ。自分の置かれた状況を冷静に見ている。
「今はみなさん、いろいろと好意的に見てくださり、取り上げてくださいますが、これで少しでも何かあれば、”天狗になっている””えらそうに””勘違いするな”なんていわれてしまうのだろうなと。ともかく自分は次の試合に向けて、今までどおり練習を続けていくだけです」
プロボクサーとして世界チャンピオンになっても、引退後の道が保証されるワケではない。ジムを開いたり、タレントになっている人は、ごくわずかな人に過ぎないのだ。内藤選手も、今は時の人だがそれが長くは続くものではないこと、そして自分は引退後、どうやって家族を養い、暮らしていけばいいのか。今はイメージがわかないようで、不安になることもあるらしい。
その番組が「オーラの泉」だったので、回答は心理学的なものやカウンセラーが対応するときのものとは違ったが、要するに「(誠実に人と向き合い、まじめに練習を重ね、自分をしっかりと見ている)内藤さんなら、心配しなくても引退後のことは大丈夫。あなたなら大丈夫ですよ」という、根拠は明示されなかったが、逆に具体的に何がどう大丈夫かと説明しなくても、そこまでに番組内で内藤選手が語ってきた話を聞けば、また放送中の態度を見れば、”大丈夫でしょう”と。それまでつくりあげてきた人間としての土台みたいなものが彼を支え、どんな仕事に就くにせよ、多くの人と支えあいながらこの人は生きていくのだろうなぁというイメージは見えるような気がした。
ただ、”大丈夫ですよ”とい一言だけでは、内藤選手もだんだんと不安にもなるであろうから、「では、今のうちから少しずつでもこんなことをしてみたら」とか、「こんなふうに自分を見つめて、ボクシングに専心していれば、きっとこんなライフスキルが身について、仕事に生かせるようになりますよ」といった、アドバイスをキャリアカウンセラーからもらえれば、なお心強いことだろう。
プロボクサーの仕事だけでは一家3人が生活できなくて、つい最近までレンタカー店で働きながら、競技を続けていたという内藤選手。地道に競技を続けてきた選手に、突然訪れた今回の防衛戦での出来事。いきなり脚光を浴びてしまったことでかえって不安も大きくなったのかもしれない。いろんなところから声がかかって、自分が有名人になった?、もしかしたら芸能界方面にも?などと、ふと考え始めると、自分を見失いそうな気がしてしまうのか。
練習は裏切らないという。そして努力してきたことは、その人を支える大事な経験になる。己の足るところを自覚し、謙虚で、そして努力して築き上げた柱のようなものを、心の中に持っている人なら、「オーラの泉」から見ても、しっかり生きていくことのみできる”大丈夫な人”なのかもしれない。
(2007.11.12)